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給与前払いサービスとは?
給与前払いとは、実際に働いた分の給与を本来の給与支払い日から繰り上げてもらうこといいます。
給与前払い自体は別に新しいものではないのですが、昨今は人手不足もあり募集してもなかなか人が集まらない中で、募集効果が高いこともあり、改めて注目されてきています。
また企業が独自でやるには事務処理上の手間であったものが、外部サービス利用することにより手間を少なくコストも抑えての運用が可能になったということも注目されている要因の一つです。
給与前払いサービスを提供している会社は10社以上あり違いはありますが、どの会社も「募集数」「定着率」「稼働率」に効果があると謳っています。
給与前払いサービスの効果
エンバイトのアンケートによると、給与の支払いの希望はこのようになっています。
日払い:48%
当日現金払い:30%
週払い:19%
月払い:3%
圧倒的にすぐにほしいみたいですね。
ただ質問に「手数料を支払ってでも」という条件なしで聞いているので、条件がある場合はまた違う結果になると思いますけども。
参考:「アルバイトのお給料」意識調査
各サービスで募集・定着率に効果があるとのことなので、それぞれのサービスでの数字をひろってみました。
募集率効果
ペイミー:10倍
キュリカ:6倍
速払いサービス:3倍
enigma pay:3.7倍
定着率効果
速払いサービス:10%高い
enigma pay:4%UP
数字をあまり記載している業者は少なかったですが、効果があるとは書かれています。
給与前払いサービスの仕組み
一般的に企業の給与支払いは月に1回です。
私の会社の場合、月末締め翌25日支払いです。
通常の給与受取り
1〜25日の働き分は翌月の25日に支払われるので、実際に働いた分の多く(1〜25日分)は、1ヶ月以上先に支給されることになります。
前職を辞めて少し間が空けてしまっている人の場合、この1ヶ月こそ早くお金がほしい時期ですから、そこを穴埋めしてくれるのが「給与前払いサービス」です。
前払いによる給与受取り
前払いできれば、5月働いた分を5月中にもらうことが可能です。
前払いで支払った分は通常支給時に差し引いて支給します。
ちなみに5月を締めた後、5月分を6月中にもらうことはできません。
前払いで欲しい場合は6月働き分を申請してもらう形になります。
預け金方式と立替方式の違い
サービスによってスタンスが大きく異なるのが、この方式の違いです。
預け金方式を採用している会社から、もしサービスを選ばれる際は、預け金方式の会社を選択することを勧められました。
理由は法律に触れる可能性があるとのことでした。
そこで立替金方式を採用している会社に、どうですかと確認したところ、各省庁に確認して問題ないという認識ですと回答でした。
こうなると後は自社がどう選択するかですね。
預け金方式
事前に一定の金額を指定した口座等に預け、そこから支払われる方式です。
①預託金を前払い会社へ預ける:勤務会社→前払い会社
②従業員から勤怠情報を集める:従業員→勤務会社
③前払い会社へ勤怠情報を渡す:勤務会社→前払い会社
④従業員は前払い会社へ申請する(承認されるわけではない):従業員→前払い会社
⑤前払いが振り込まれる:前払い会社→従業員
⑥前払い実績情報を前払い会社より取得(クラウドからダウンロード):前払い会社→勤務会社
⑦通常給与を支払う:勤務会社→従業員
⑧手数料等を支払う:勤務会社→前払い会社
立替方式
従業員からの申請に応じてサービス会社が立替えて支払う方式です。
①従業員から勤怠情報を集める:従業員→勤務会社
②前払い会社へ勤怠情報を渡す:勤務会社→前払い会社
③従業員は前払い会社へ申請する(承認されるわけではない):従業員→前払い会社
④前払いが振り込まれる:前払い会社→従業員
⑤前払い実績情報を前払い会社より取得(クラウドからダウンロード):前払い会社→勤務会社
⑥通常給与を支払う:勤務会社→従業員
⑦立替金、手数料等を支払う:勤務会社→前払い会社
残金不足にならない手間と資金繰りを考えると立替金方式に歩があります。
給与前払いサービスの法律上の問題は
給与前払いサービスで法律に触れる可能性があるものは以下の2つです。
・労働基準法(厚生労働省)
・貸金業法(金融庁)
労働基準法に触れるのではと懸念されているのは、「通貨払いの原則」「直接払いの原則」「全額払いの原則」「毎月1回以上の原則」「一定期日払いの原則」「前借金相殺の禁止」あたりですね。
貸金業法に触れるのではと懸念されているは、「利息制限法」「貸金業法」です。
貸金業を事業で行っている企業である場合、発生する手数料が利息にあたるのではという懸念です。
また貸金業を行っていない場合でも、登録がないまま貸付を行っているとして貸金業法に触れるのではという懸念です。
ただ「サービス事業者の給与前払いが貸付にあたるか」について、2018年12月に金融庁から貸付にあたらないとする一応の見解が公表されました。
参考:経済産業省「給与前払いサービスの提供について」
これは株式会社ペイミーが経済産業省に問い合わせした結果ですので、全てのサービス会社に適用されるものでないとのことですが、大きく逸脱していないサービスでない限り、同じ回答になるだろうと思います。
実務上の手間は
実務で発生する手間は主に5つです。
預け金を預ける
預け金が足りないと従業員がお金を受け取れない可能性があります。
立替金方式を採用している会社の場合、この処理はありません。
従業員のマスター登録
前払いは従業員の時給と勤務実績データから計算されます。
取り込む勤務実績データには従業員IDを持たせ、マスターの従業員IDと紐づけて試算されます。
勤怠データをシステムに入れる手間
勤怠データをCSV等で出力することができる勤怠管理システムを利用しているのであれば、それほど手間でないでしょう。
ただ出力するデータは従業員の日ごとの勤怠データが必要となります。
勤務表を紙で行なっている会社はシステムに直接入力することができるサービスもあります。
支払い額データを給与計算上に反映させる手間
前払いで支給した金額は通常の給与支給時に控除する必要があります。
また従業員の負担する費用も給与支給時に控除します。
法律上、従業員へ振り込むタイミングや引き出すタイミングで負担させることができません。
サービス会社へ支払う
月1回手数料もしくは立替金分を含めサービス会社へ支払います。
受け取り側の手間は
ほとんどのサービスは指定した銀行に振り込まれます。
ただその中でキュリカは利用にカードを作成する必要がありますが、セブンイレブン・ローソン・E-netなどコンビニATMで24時間365日引き下ろすことが可能です。
従業員としては便利ですね。
話は逸れますが、電子マネーpringを使えば、自分の銀行口座を登録することで、セブンATMで24時間365日、1日1回まで手数料無料で引き落としことができます。
費用は?
費用は会社が負担する費用と従業員が負担する費用があります。
会社が負担する費用
・初期導入費
・月額利用料
・1回あたり手数料
従業員が負担する費用
・1回あたり手数料
ただこれらの費用はどの会社でも発生するものではなく、会社によって異なります。
初期導入費、月額利用料などかからないサービスもあります。
また会社が従業員費用を負担することもできます。
ということで会社に導入するべく比較検討をしてみました。
給与前払いサービス比較
ペイミー | 速払いサービス | アドバンストペイ セゾン | キュリカ | プリペイ | |
---|---|---|---|---|---|
提供する会社 | payme | エーピーシーズ | クレディセゾン | キュリカ | イデアホールディングス |
方式 | 立替方式 | 預け金方式 | 立替方式 | 預け金方式 | 預け金方式 |
企業負担 | 初期費用:0円 月額費用:0円 | 初期費用:50,000円 月額費用:5,000円 | 初期費用:0円 手数料:100円(1件) | 初期費用:0円 月額費用:50,000円 | 初期費用:20万円(今だけ無料) 月額費用 プラン1:0円 プラン2:5,000〜30,000円/月額 |
従業員負担 (1件あたり) | 3~6% | ~572円 送金プランにより変動 | 3万円以下:450円 3万円超:650円 | アコム:300円 銀行系:400円 | プラン1:500円 プラン2 銀行振込:500円 イデアカードチャージ:195円 |
特徴 | 企業負担なしでの運用が可能 | ・勤務表を紙で運用している会社向けのシステム有 | 平日AM11:00受付分まで当日振込 | ・コンビニATMで24時間365日出金可能 ・銀行口座がなくても利用可能 | ・方式の選択可能 ・電話での申請も可能 |
企業先リンク | ペイミー | 速払いサービス | アドバンストペイ セゾン | キュリカ | プリペイ |
まとめ
まだ検討段階で導入は決めていません。
でもある程度の効果は期待できるのかなと思います。
理想としてはあまり利用されず、募集数や定着率や稼働率には効果があることですかね。