読書のメモ書き

「少年H」と「昭和史」

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公開早々「風立ちぬ」を見ました。
本編が始まる前の予告で「少年H」が流れていました。
その影響で本を読んでみようと思い、図書館で借りてきました。

1997年に刊行された本なので、16年前の作品です。
それが今年に映画化されたのは、隣国との摩擦や憲法改正が叫ばれている昨今、それに対する何らかのメッセージ性があるものなのか。

「風立ちぬ」も戦争の話。
他に予告でやっていた「終戦のエンペレー」も戦後直後の話。
戦争をテーマにした作品が多いですね。

概要
少年Hは主人公「少年:妹尾肇」の名前の頭文字であるHから来ている。
舞台は神戸。
両親に妹1人の4人家族。
両親はともにクリスチャン。
特に母親が熱心。
実家は洋服屋を営んでいる。
神戸は同時も国内有数の港町のため外国人がたくさんいた。
洋服屋を営む実家のお客さんも各国の商人や軍人がおり、少年Hは子供の頃から外国人へのなじみがあった。
物語は戦争前夜といった徐々に世の中が不穏な空気に覆われていくところから始まる。

この本は作者である妹尾河童氏の子供時代の話を書いたものである。
つまり「妹尾河童=妹尾肇=少年H」である。
戦後何十年たって同窓会の時に、同級生から本に書けと言われたのが動機と語っていました。
なぜ同級生が本を書けといったのか?
それは少年Hが変わり者だったのと、そして家族が変わっていたから。
そして洋服屋を営んでいたこともあり、外国人と接する事が多かったため、「外国人=恐怖」ではなかったというのも大きく影響を与えたという。

少年Hがどれだけ変わり者であったかというのは、田原総一郎氏との対談で語られている。
田原総一郎氏はお国のために死ぬ気満々だったという。

田原総一朗さんと妹尾河童さんとの対談

物語の中には空襲や戦闘機に狙われた話などが書かれている。
仲のよかった近所の兄ちゃんがしょっぴかれたり、徴集から逃れた近所の兄ちゃんが自殺をしているのを発見したり、エンパイアステートビルの写っている一枚の絵はがきを持っていた事により、父親にスパイ容疑がかけられて連衡されたり。
私だったらとてもではないが、安定した精神を保てなさそうな出来事がたくさん起きている。
しかし、悲惨さや陰惨さは感じられない。
起きている事を淡々と受け流し、戦争のさなかでもたくましく生きた少年の話であり、戦争の中でも自分のやりたい事に正直に生きている様子が書かれているように思えた。
笑いもするし、絵も描くし、映画も見に行く。

私の戦争中のイメージは常に緊張状態。
いつ敵が攻めてくるかわからない。
いつ治安維持法によるが取り締まりにくるかわからない。
いつ徴兵されるかわからない。
そんな状態にあると思っていた。

これらはあまり間違っていないと思える。
現に本の中にも書かれている。
でもそれだけに、そうでない部分に強い印象を受ける。

中でも印象的なのは、空襲を受けたすぐ後に、映画館に映画を見に行くという箇所。
戦争中に娯楽があったんだなと。

この本は戦争を体験した一人の少年の視点から書かれている。
いわゆる下からの視点です。
でもその少年から見てもこの戦争は負ける戦争だと悟っていた。

「少年H」と対極にある立場の視点で書かれているのが半藤一利「昭和史」。

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いかに戦争へ突入していったのかを人物を中心にかかれており、タイトルに反してとても読みやすい。
どのようなパワーバランスの中で戦争に突入していったのか。
当たり前だがアメリカとの戦争に反対していた者もいた。
昭和天皇がいかに戦争を回避しようとしていたのか。
それに対して軍人が敬いながら、大義名分を作り出し戦争へと導こうとしたのか。
非常におすすめな本です。

ちなみに最近宮崎駿と対談本を出してます。

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