読書のメモ書き

「新世界より」

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貴志祐介さんの作品は久しぶりです。
「青の炎」まで読んでいたのですが、それ以来のひさびさの作品です。
圧倒的な文章力によって作られた世界観へ没入する感がたまらないです。

表紙の裏より

1000年後の日本。「呪力」こと、念動力を手に入れた人類は、「悪鬼」と「業魔」という忌まわしい伝説に怯えつつも、平和な社会をきづいていた。
しかし、学校の徹底した管理下ににあった子供たちが、禁を犯したため、突然の悪夢が襲いかかる。
崩れ去る見せかけの平和。異形のアーカイブが語る、人類の血塗られた歴史の真実とは!?

1,000ページ弱。
主人公渡辺早季の手記といった形で過去の物語が綴られる。
ページ数からわかるように長いです。
世界は現代から1000年後ですが、空飛ぶ車が出てきたり、ホログラムの立体テレビが出てくるわけではなく、のどかな風景がのぞむ田舎の世界。
違うのが「呪力」という念動力という力を人類が持っている事。
「呪力」を使うことで物を浮かせたり、自分を浮かせたり、飛んできた物の起動を変えたり、物を破裂させたりできます。
そして本来であれば人間をも殺すことができます。
本来はというのが物語の大きなポイントにもなるわけですが。

主人公が住む町「神栖66町」
人口3,000人の町で学校が3校。
大人の半分が教育に従事する仕事についている。
貨幣経済ではなく、助け合いと無償の奉仕を基盤としている。

「田舎=平和な世界」という世界観をイメージさせます。
それを端的に表すセリフが出てきます。

「待ってくれよ。そんな、馬鹿な。ありえないだろ。だってそのAって奴だって人間なんだろう?人間が、人間を殺したって?」

この世界においては人が人を殺すことが異常の世界なのです。
現代においても異常な事ですが、殺人事件がおきても不思議な事ではありません。
しかし、この世界においてはおこりえない事なのです。

現在平行して「銃・病原菌・鉄」を読んでいるんですが、この本では「現代世界における不均衡の要因」について膨大なデータをもとに、「銃・病原菌・鉄」が不均衡の世界を作るのに大きな役割を果たしたと考察しています。
本の中でマリオ族が数千人いたモリオリ族を最終的に全員殺した事が書かれています。
モリオリ族は和平案をもって解決する方法を提示したのに関らず。
マリオ族の言い分としては

「われわれは、自分たちの慣習にしたがって島を征服し、すべての住民を捕まえた。逃げのびた者は一人もいない。逃げた者は捕まえて殺した。残りの者も殺した。それがどうしたというのか。われわれは、自分たちの慣習にしたがって行動したまでである」

1835年の出来事です。
これも異常な世界ですが、こちらの方があっても不思議な事とは思えません。
むしろこのような世界を経て、今の倫理観の世界が形成されてきたわけです。

本の裏に書かれている
「人類の血塗られた歴史の真実とは!?」
血塗られた歴史。
その歴史を経て殺人事件がおこりえない世界が形成されたのです。

徹底的に漂白された世界
それが「新世界より」における世界観です。
しかし、光があれば闇もあるように、「新世界より」の世界にも闇はあります。
その象徴的な存在が「バケネズミ」。

バケネズミとは
それまで見たことのある生き物の中で、一番醜い顔貌だった。
鼻面は寸が詰まっており、ネズミというよりはむしろ豚を思わせる。
細かい産毛の生えた白い皮膚は、だぶだぶに弛んで幾重にも皺ができており、その奥で小さなビーズのような目が光っている。
唇の中央部が大きく切れ込んでいるために、黄色い鑿のような門歯は、鼻から直接生えているように見えた。

「呪力」「漂白された世界」「バケネズミ」
これが物語における大きなポイントです。

新世界よりがより面白くなる情報

知りませんでしたが、アニメにもなっていたんですね。
今度一挙無料方法をやるようです。

アニメ『新世界より』本編を期間限定で無料配信いたします!
12歳編(1~7話):7/11~7/17
14歳編(8~16話):7/18~7/24
26歳編(17~25話):7/25~7/31

貴志祐介先生インタビュー
30年という長期構想の作品との事。
ちゃんと形にできたのがすごいです。

新生物カード名鑑
新世界よりには色々な気持ち悪い生物が出てきます。
巧みな描写で書かれていますが、イメージしきれない生物がたくさんいます。
それがイメージできるだけで、ストーリーへの没入感が増します。

漫画版もあるみたいですね。

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