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「風立ちぬ」の感想。「面白った!」とは思えなかったが、また見たい。

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公開から遅れる事4日、「風立ちぬ」を見てきました。
かなりネタバレしているので、見てない方は読まないでください。

感想は「難しい」
まず感想を一言で言うのが難しい。
そして他人にどんな映画かを説明するのも難しい。
「面白かった」と断言できないが、つまらなかったというとそういうわけでもない。
時間がたった今でも自己整理できずにいるので、感想もまとまってません。

上映時間は126分。
あっという間だった。
つまらない映画は長いと苦痛に感じるが、それはまったくなかった。

エンディングロールが流れて出した時は、
「これで終わりかい!」
という気持ちになった。

メッセージ性を持った映画でありながら、メッセージを伝えたくない映画。
そんな印象を受けました。

主人公「堀越二郎」
ヒロイン「里見菜穂子」

物語は主に2本の軸で展開します。
・飛行機を作るという夢への情熱
・二郎と菜穂子の恋愛

本当は平和利用で使われたかった技術が、戦争の道具として使われる事に悩む主人公。
映画や小説では、そのようなストーリーがよくありますが、「風立ちぬ」では違います。
「風立ちぬ」の主人公堀越二郎は飛行機を作りたいという子供の頃からの夢をかなえるため猛勉強をし、飛行機を製造している会社へ入社します。
時代が時代なので、戦闘機の製造している事を理解した上で入社し、自分の夢であった飛行機造りに携わります。
しかし、戦争利用ではない使われ方をしたいという本当の気持ちが物語の節々で描かれています。
それでも飛行機を造りたいという夢をかなえるために、戦争というある意味「闇」の部分を飲み込んで戦

闘機造りに没頭します。
夢をかなえるための人殺しとしての戦闘機を作るわけです。

それと平行してすすむ菜穂子との恋愛の軸。
菜穂子は「結核」を患っていました。
病気のための富士の高原病院へ入院しますが、二郎と暮らすため抜け出します。
二郎の上司の家で祝儀を挙げ結婚をし、2人の生活が始まります。

二郎は戦闘機造りに不眠不休で働きます。
菜穂子はその間も病気が進行します。
二郎の妹が来たときに、医者の妹は二郎に菜穂子と付き添って高原病院で療養させる事をすすめます。
それに対して、二郎は「2人の時間を大事に生きているだ」といってその意見を取り入れません。

飛行機が完成し、飛行演習に行く前の夜、二郎は仕事で長く家に戻れないと告げます。
その次の日二郎が仕事へ向かった後、菜穂子は3通の置手紙をして高原病院へ戻ります。
映画を見ている時は、菜穂子はこの時もう自分が治らない事を悟っていたのだと思いました。
だから二郎が戻らないうちに高原病院へ戻ったのだと。
でも今思うと、二郎も菜穂子がもう治らない事を悟っていたのではないかと思います。

人間は矛盾を常に抱えている生き物である。
飛行機を造りたい。
戦争は反対。
しかし、飛行機をつくるためなら戦争のための飛行機を造る。
誰よりも菜穂子の事を愛している。
菜穂子のためにできる事なら何でもしてあげたい。
でも菜穂子のために飛行機造りをやめて、高原病院へ行く事はしない。

場面は戦争後へ。
カプローニ氏との会話。
「何も残らなかった」という二郎の言葉。
「ゼロ戦」という当時世界最高峰戦闘機を作り上げた二郎の言葉。
戦争に負けたから何も残らなかったという意味なのかと思いました。
しかし、そうではなく、愛する者を見送ることもせずに、自分の夢を実現させて作った物が、自分にとって一体なんだったのかという喪失感から出た言葉だったのではと。

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部分的な感想
当時「結核」は亡国病と呼ばれるほどの病気で、常に死亡率のトップを占める病気でした。
現在であれば「がん」と告知される事と同等ぐらい絶望的な病気だったと思います。
しかし、菜穂子が結核である事を二郎に告白する場面が、伝える側も受け止める側も軽すぎる。

二郎のいない所で、菜穂子が苦痛と戦ってる場面があればよかったかなと思いました。
もしくは、高原病院から抜け出して雪原を歩くシーンで、足跡の残る雪の上に赤い血が点で残っている。
といった菜穂子の体が病魔に蝕まれているのが伝わる演出があれば。

あと二郎が高原病院へ行かない理由の部分。
戦争中であり、二郎の造る戦闘機が戦況を左右する状況にあって、二郎が会社を辞めれるわけもない。
しかし、映画の中ではそれを重々しく描きません。
あくまで、二郎が夢である飛行機造りを譲らないといった描き方をしています。
でももう少し心の葛藤があってもよかったのではないかと。
本来造りたいものではない、戦闘機としての飛行機造りに手足を縛られて、菜穂子の事を一番に思ってやれないという描写なりが。

ただあえてそれらを描かず淡々とつむいだ作品にしたのだと思います。
それによる効果か、私は「風立ちぬ」がどうメッセージを持ったものなのだろうと、数日間考えてしまいました。

すぐにまた見たいとはなってませんが、少し経ったらまた見たいです。
あのシーンのあの言葉にはどんな意味があるのだろうと考えながら。
特に、菜穂子の最後の言葉がどういう意味を持つのかを腑に落ちたい。

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