貸倒引当金とは、売掛金や受取手形等の金銭債権に対して、将来回収不能と見込まれる金額を計算したものです。
ビジネス活動においては、得意先が倒産してしまう事があります。
その時に、倒産した得意先に対する売掛金や受取手形などの金銭債権がある場合、回収する事が困難となります。
このように、金銭債権を回収できなくなる事を「貸倒れ」といい、「貸倒れ」に備えて、設定しておく準備金を貸倒引当金といいます。
そこで問われるのが、いくら貸倒引当金を設定するかという事です。
その際に金額計算に利用されるのが貸倒実績率です。
簿記3級では貸倒実績率を求める問題はでませんが、どういったものであるかは理解しておきましょう。
債権は主に3つ種類あります。
1、一般債権
2、貸倒懸念債権
3、破産更生債権等
2と3は名前から想像できる通り、回収可能性が低い、もしくはほぼ回収不可能の債権です。
これは簿記3級では問われません。
簿記3級では1の一般債権の貸倒引当金について問われます。
一般債権の貸倒引当金は、過去の貸倒実績に基づいて計算されます。
例えば過去に売掛金や受取手形等の金銭債権が2%貸倒れている場合、貸倒実績率は2%となります。
期末において売掛金や受取手形の合計額が1,000円であった場合、貸倒実績率の2%をかけた20円が回収できないかもしれないと計算します。
この20円を「貸倒引当金繰入(費用)」という勘定科目で、相手科目は「貸倒引当金(資産のマイナス)」という勘定科目で仕訳します。
例題:売掛金と受取手形の期末残高1,000円に対し、2%の貸倒引当金を設定する。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
貸倒引当金繰入 |
20 |
貸倒引当金 |
20 |
この貸倒引当金は設定した売掛金等が貸し倒れたときは取り崩します。
「取り崩す」とは、設定した引当金を減らす事をいます。
実際に貸し倒れが発生した時は、貸し倒れた分だけ売掛金や受取手形を減少させ、合わせて貸倒引当金を取り崩します。
実際の仕訳
例題:前期に貸倒引当金20円を設定していた売掛金20円が貸し倒れた。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
貸倒引当金 |
20 |
売掛金 |
20 |
なぜ貸倒引当金を設定するのか?
貸倒引当金を設定は、期末(仮に×1期期末)に期末時点における金銭債権に対して行います。
この金銭債権は×1期中に発生したものです。
×1期に発生した売掛金等の金銭債権が、×2期に貸し倒れた場合、×2期の費用とすることは、適正な期間損益計算とはならないと考えます。
ですが、×2期の貸し倒れを×1期に反映させることはできません。
そこで、貸倒引当金を設定し、あらかじめ×1期の費用として計上しておくわけです。
×2期に発生した売掛金等の金銭債権が、×2期中に貸し倒れた場合は以下のようになります。
例題:当期×2期に発生した売掛金20円が貸し倒れた。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
貸倒損失 |
20 |
売掛金 |
20 |
貸倒損失は費用です。
×1期末に貸倒引当金を設定していても、×2期に発生した売掛金が貸し倒れた場合、貸倒引当金は取り崩しできません。
×1期末に設定した貸倒引当金はあくまで×1期に発生した売掛金等が貸し倒れた場合に取り崩します。
では、×1期に発生した売掛金が貸し倒れたが、×1期末に設定していた貸倒引当金以上の売掛金が貸し倒れた場合はどうなるでしょう。
例題:×1期に発生した売掛金が30円貸し倒れた。×1期末に貸倒引当金は20円設定している。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
貸倒引当金 |
20 |
売掛金 |
30 |
貸倒損失 |
10 |
設定している以上の貸倒が生じた場合は、まず貸倒引当金を取り崩し、それを超えた部分については、貸倒損失で仕訳します。
貸倒引当金の期末残高がある場合の、貸倒引当金の設定方法について
例えば、×2期に設定すべき貸倒引当金が30円で、貸倒引当金の残高が20円あるという場合(×1期に設定したものの残額)、×2期の決算では、貸倒引当金の残高が30円になるように(30円-20円)だけ貸倒引当金を追加計上します。
この処理方法を差額補充法といいます。
売掛金の期末残高15,000円に対し、2%の貸倒引当金を設定する。
なお、貸倒引当金の残高は200円である。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
貸倒引当金繰入 |
100 |
貸倒引当金 |
100 |