読書のメモ書き

あんぽん-孫正義伝-

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ポイント抽出

・佐野眞一
・血と骨
・在日と差別

佐野眞一

”孫はいまから55年前の昭和32年、佐賀県鳥栖駅に隣接し、地番もないという理由で無番地とつけられた朝鮮部落に生まれ、豚の糞尿と、豚の餌の残飯、そして豚小屋の奥でこっそりつくられる密造酒の強烈なにおいの中で育った”

この本を理解するのに役立つのが佐野眞一というノンフィクションライターについてのその信念であろう。

生まれ育った環境や、文化的歴史的な背景を取材し、その成果を書き込まなくては当該の人物を等身大に描いたとはいえず、ひいては読者の理解を得ることもできない。それが私の考える人物評伝の鉄則です。 ましてや公党の代表である公人中の公人を描く場合、その人物が生まれ育った背景を調べるため、家族の歴史を過去に遡って取材することは、自分に課したいわば私の信念です。

週刊朝日の橋下徹・大阪市長連載記事に関する佐野眞一氏のコメント

と書かれている。
この本もそれを元にかかれた本だ。
というよりもこの本の成功体験があり、よりい味をしめたのではという思いもする。
週刊朝日の記事を読んではいるわけではないが、この本はその後の佐野氏の取材に対する思想にさらなる影響を与えたように思える。

血と骨

佐野氏の信念どおり、孫正義につながる家族や祖先、育った背景について描かれている。
しかし、それが孫正義の今の姿につながっていると見るには、いまいちつながらない。
確かに父三憲の強烈な性格とそれに関わる親族のエピソードは孫正義の性格や思想に影響を与えていると思う。
しかし、それはあくまで直に生活を供にし、教育を受けたという部分による影響であり、血と骨的なものが影響を与えているとは思えない。

一つの章に「脱原発」のルーツを追ってというのがある。

”孫一家が日本のエネルギー産業のいわば最深部で働いてきた一族だったという事実”
”孫の母方の祖父にあたる人物は、日本人口入れ屋のペテン同然の手口にひっかかかって朝鮮半島から玄界灘を渡って九州へ連れてこられ、筑豊の炭田で働かされた。
そしてその長男も筑豊の炭鉱で働かされ、200名を超える犠牲者を出した炭鉱ガス爆発事故で死んだ。その一族の末裔の孫正義が、いまや再生可能エネルギーの転換を求める脱原発のリーダー的存在となっている。これは偶然というにはあまりに皮肉な歴史の符号である”

要因と結果の整合性を考えると血脈や環境によって孫正義という人間が作られたとみた方が腑におちると思う。
孫正義が孫正義たる理由は、生まれ持っての何か。(血や骨ではないもの)
と思えてしまう。

以下の2つのエピソード

高校1年生のときに学習塾を経営したいと思っていると、カリキュラムを考え中学時代の担任に塾の責任者をやってくれないかと頼んだ。

三憲が立地の悪い場所に喫茶店を開こうとしたときに、商売にならんとコーヒーを売ってもらえなかった。
そこで小学3、4年の正義に相談した。
するとコーヒー何杯飲んでも無料というアイディアを出した。
そしてそれを三憲は実行した。
確かにコーヒーは無料だったが、他の飲食で儲けを出すことができ最初から黒字にする事ができた。
小学3、4年で考えつく正義もそうだが、相談し実行する三憲の方も相当すごい。

在日と差別

タイトルの「あんぽん」とは孫家の通名である「安本」を音読みしたものである。

”日本では以前、多くの韓国人がひどい差別を受けていた。在日韓国人のうちの99%が本名の韓国姓ではなく、日本の姓を名乗っている限り、たいていの日本人は韓国人だということに気づかない。
しかし、いったん韓国人だとわかると、あらゆる種類の差別を受ける。”

在日として差別を受けた。
今もツイッターやネット上で差別を受けている。

”「国のため、国のためって言うけど、あんたは在日じゃないか?」
すると孫さんは「俺は日本人だ」と言って、こう反論してきた」”
「このままでは日本は世界から取り残される。だから、これは日本のためなんだ。お前は国のための事業だと思わんのか?」
孫さんは強烈な愛国者なんです。社長室には神棚もあります」”

ある事に復讐を考える場合、方法は大きく2つあると思う。
1.貶めるか
2.相手に感服させるか

※2の場合、復讐というよりは見返すという言葉の方が正しいけど、あえて復讐で。

孫さんの場合、2によって在日差別に復讐をしようとしているのでないかと思う。

現在メジャーリーグで活躍中のダルビッシュ投手
もともとメジャー興味がなかった。
でも日本人投手が振るわないなかで、日本人はすごいという事を見せつけるためにメジャー行きを決意した。
まさに愛国というものである。
そもそもメジャーに興味がなかったものの、日本人だからアメリカにいく必要がないという考えだった。
子供の頃ハーフということで差別を受けた。
しかし、野球によって見返し、日本の代表的な選手としてアメリカで勝負する。

どちらも2によって差別に対して復讐しようとしているように思える。

ただ在日というのはフィルターにかけられる。

”朝鮮からの強制連行という言葉が出たとき、孫が示した過剰とも思える反応だけ書いておきたい。
「北朝鮮の拉致問題は、許せない悪いことですよね。でも過去には、それのずっと大規模なことを日本がやったんです。私たちの祖先は、何万人規模で強制連行されてきて、炭鉱や鉄道づくりに働かされたんです」
~中略~
被害者側はなかなか忘れない。特に僕のじいちゃん、ばあちゃん世代にはそういう意識が結構あったと思います。でも、僕にはそういう被害者意識は全然ない。在日三世ですからね」”

こうした歴史的背景の中で、孫正義さんは被害者意識は全然ないといっているが、何かしらの復讐心を持っているんじゃないかと疑ってしまう気持ちになるのはわかる気がする。

でも私の考えとして孫正義氏にそんなものはないと思う。
もはや金欲もそんなにないと思う。
お金がないと大きなビジネスができないためにお金を必要とするが、あくまで道具としてのお金であって、お金を目的としていない。
孫正義の目的はいかなる偉業を成し遂げたかという事で歴史に名を残す事。
これが在日として差別を受けたことに対する復讐であると思える。

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