これまでの記事
予算作成の目的と必要性-予算作成入門①
予算を作成するにあたり押さえておきたい3つのポイント-予算作成入門②
今回は予算作成入門③ということで、実際の予算作成に入りたいと思います。
目次
「売上」と「営業利益」目標を決める
決めるのは経営層ですが・・・
会社全体の大きな枠組みでの数値を決めるか、部門ごとの目標まで決めるのかは会社によって異なります。
ベースは実績数値の推移で決めます。
ただ新規事業を始める場合、当たり前ですが実績がありませんので、事業計画に基づいて数字を作成します。
目標として作成する数字は「売上」と「営業利益」ですが、借入が多い場合や資産運用に力を入れている場合、営業外損益を加えた「経常利益」を目標とするのもいいです。
会社によっては経理で案を出してと言われる場合もあります。
その場合は、とりあえず次の手順から始めてください。
予算作成シートの説明
ここからの説明は基本的に、このシートに沿ってしていきたいと思います。
予算試算シートはこちら→予算試算シート
項目についての説明
A 固定費/共通・・・毎月・半年・毎年に固定額が発生する費用
B 準固定費/共通・・・毎月発生するが金額が月によって変動が激しい費用
C 不測費/共通・・・イレギュラーに発生する費用、講習会費用など施策的に管理が可能な費用
D 人件費/共通・・・人にかかる費用。福利厚生費の中で個人に対して確実に課される費用
E 減価償却費等・・・期間償却するものについては、固定費に分類せず別途計算します
F 個別収支・・・個別収支を集計。売上と原価が比例する関係にあるもの
シートに数字を埋め込んでいき部門予算を作成してもらいます。
ただ0から数字を積み上げて予算を組むのは大変です。
そこでいかに作成してもらやすくできるかが、経理としての手腕が問われるところです。
経理としてできることは何か?
それは予算の下地を作成をしてやることです。
あくまで下地ですので、それをベースに各部門長に修正をしてもらいます。
強調しておきたいのがあくまで下地という点です。
もし渡した予算をそのまま使ったとしても、それは部門長が作成したものとして処理します。
※これからの説明は個別原価計算で行っている私の会社を例にしています。
経理処理の違いによってできることは異なりますが、どのような考え方で行うと良いかの参考にはなると思います。
人件費/共通を作成する
作成する部分
人件費は人員計画に基づいて作成します。
現状の人員をベースに、人事異動・新規採用・定年退職などさまざまな要因による増減が考慮したものが作成されます。
人件費は人数が1人違うだけでも数字が大きく変わります。
正社員人件費の試算
分類の「06人件費」の部分を作成します。
シートの順番とは逆になりますが、まずは正社員の人件費について説明します。
人件費の項目
・基本給
・時間外
・通勤手当
・退職金
・福利厚生費(団体生命)
・福利厚生費(健康診断料)
・法定福利費
・賞与
・賞与法定福利費
この中で時間外以外は金額が固定です。
ただ来期の数字ですので金額が変わる可能性があります。
例えば基本給は昇給で変わりますし、退職金(引当)も増えます。
健康診断料も年齢によって検診内容が変わり、料金も変わります。
時間外は管理すべき費用です。
とりあえずは実績から数字を試算します。
しかしこのご時世ですので、時間外労働を抑える方針で、何時間以内に収めるとした方針を掲げて、見積もるのがいいかもしれません。
また人を増やした場合、基本給が増える分、時間外を減ると見込むことも可能です。
実際にシートに入力してみます。
基本給~福利厚生費(健康診断)までは、試算した数字を入力します。
すると灰色がかった次の3つは自動計算されるようになっています。
それぞれの計算式
法定福利費:(基本給+時間外+諸手当+通勤手当)×15.23%
賞与:基本給×33.33%(基本給の2ヶ月の場合)
賞与法定福利費:賞与×15.23%
契約社員費の試算
分類の「03契約社員費」の部分を作成します。
契約社員についても正社員と試算方法はほぼ変わりません。
ただ正社員にはあるけども、契約社員にはない費用がありますので分けています。
派遣社員費の試算
分類の「05派遣社員費」の部分を作成します。
直近に数字をもとに試算します。
このように契約形態により分けて入力していきます。
施設予算(減価償却費)を作成する
作成する部分
各部門の来期購入予定の固定資産を把握するとともに、予算外の固定資産購入を管理するためにも必要な資料となります。
資料は固定資産管理台帳から作成します。
償却満了時期に基づいて、固定資産を4つに分類します。
①償却満了済
②今期償却満了予定
③来期償却満了予定
④来期以降償却満了予定
①償却満了済
現在、減価償却費が発生していないので、減価償却費が純増します。
②今期償却満了予定
今期すでに買い換えをしている場合は、すでに買い換えている後の固定資産が減価償却費が計算されていますので、計算不要です。
これから買い換えをする場合は、新しく購入する固定資産の金額を持って減価償却費を計算する必要があります。
③来期償却満了予定
来期中に新しい資産に買い換えする可能性がありますので、減価償却費の金額が途中で変わります。
④来期以降償却満了予定
現在の償却金額そのまま使います。
注意が必要なのは除却をする場合です。
除却をする場合、期首帳簿価額が全額費用となりますので、除却予定がないかを確認する必要があります。
固定資産管理台帳に、購入予定の固定資産を記載して返してもらいます。
その際、購入予定額がわかるような見積書等を付けてもらい、減価償却費を計算します。
まとめ
人員計画情報の収集や購入希望固定資産情報の収集は時間がかかりますので、それを見込んで動くようにしましょう。